この記事では、インカム投資家から注目されている超高配当ETF
- QYLD
- XYLD
- RYLD
について紹介します。
どれも異常なまでの分配利回りを誇るETFであり、毎月分配でもあることから、世界中のインカム野郎のPFに組み込まれている人気者となっています。
今回は、これらの特徴を整理し、どういった特徴があるのかを整理してみましょう。
簡単に結論
- 成長も欲しい:XYLD
- 利回りを重視:RYLD
- 利回りこそ命:QYLD
なお、以前に【QYLD】と【XYLD】を比較したものもございますので、そちらも合わせてご覧いただけたらと思います。
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3種を比較
早速ですが、表にすると以下のようになります。
※各情報は、2022年7月中旬のものです。
基本情報の比較
また、それぞれの直近1年利回りは
- QYLD:12.7%
- XYLD:10.8%
- RYLD:12.3%
となっております。
根本の差は「ベンチマーク」
これらの根本的な差とは、それぞれが指標とするベンチマーク(元指数)です。
- QYLD:Nasdaq100
- XYLD:S&P500
- RYLD:Russell 2000
この違いこそが、それぞれの基準価格の変動要因であり、分配金額に差をつけるものなのです。
元指数から捉える特徴
仕組みの話を簡単に
カバード・コールの仕組み上、元指数の値上がりによる利益のほとんどを放棄することになるので、好調な局面では元指数に連動するETF(QQQ,VOO等)を保有している方が遥かにパフォーマンスは良くなります。
元指数が値下がりした際には、若干であればオプションプレミアムによる下落クッションが働くため、元指数よりも値下がりが抑えられる事が多いです。ただ、これにも限界があるので、下落が長く続いた場合には指数同様に下げるようになります。
元指数の値動きが「上下の大きなうねり」になってしまうと、上昇を捨てつつ下落を受けることになるので、ETFの価格が削られるだけという虚しい状況になります。
すなわち、カバード・コール戦略にとって最もありがたい状況とは、「トレンドを形成せず、できる限り小刻みかつ激しめにジグザグしている状況」なのです。
そもそも、カバード・コール戦略とは「横ばい相場での利益を狙う」手法であるため、まさにそれだと言えます。
よって、カバード・コールETFの保有を検討する際は、それらの元指数がどのような値動きをしているのかを過去のチャートから確認することが重要です。
元指数のチャート
- 紫:QQQ(Nasdaq100)
- 桃:VOO(S&P500)
- 緑:VTWO(Russell2000)
ここ最近こそ下げてますが、【QQQ】が圧倒的な値上がりですね。
カバード・コールETFのチャート
- 紫:QYLD(Nasdaq100)
- 桃:XYLD(S&P500)
- 緑:RYLD(Russell2000)
カバード・コールETFで見ると【QYLD】は最下位です。これは【Nasdaq100】の値動きが「上下の大きなうねり」になってしまったからです。
カバード・コールにとって、元指数の値上がりは重要でないことがわかります。
なお、これらは基準価格の値動きであり、分配金は含まれておりません。
【QYLD】の特徴
【QYLD】の元指数である【Nasdaq100】は、セクターの偏りが激しく、さらに高PERであるグロース系銘柄の集合体であるため、決算発表や各種経済指標発表等のニュースにより上下に激しく値を動かし、トレンドを形成します。
値動きの激しさはオプションプレミアムの利益向上につながるため一概に悪いとは言えませんが、それが一方向に続いてしまうとETFそのものの価格が伸び悩んでしまいます。
Nasdaq100のセクター比率
セクターに偏りがあるため、セクター単位のトレンドに引っ張られます。
【XYLD】の特徴
【XYLD】の元指数である【S&P500】は、セクターの偏りが控えめで銘柄数も多く、大型株にて構成されていることから、【Nasdaq100】と比べて値動きに大人しさがあります。また、多少なりともジグザグしながら成長していくため、ETF価格の削られ方も控えめとなり、ETFそのものの値上がりも若干ながら期待できるものとなっています。
セクターの偏りが控えめであるため、【Nasdaq100】にあるような急激かつ1方向の値動きになることは少ないですが、その分発生するオプションプレミアムも控えめとなってしまいます。
S&P500のセクター比率
王道の指数であり、そこまでの尖りはありませんね。
【RYLD】の特徴
【RYLD】の元指数である【Russell 2000】は、セクターバランスが良く銘柄数も2,000と多いため、非常に安定した値動きになるのではと思ってしまいますが、構成銘柄の全てが小型株であるため、意外と激しい値動きとなっています。
値動きそのものは激しいため、オプションプレミアムの利益は高くなりますが、一方向に続く値動きは少ないため、【QYLD】と比べて価格の削られ方が控えめになると期待できます。
しかし、構成銘柄の全てが小型株であるゆえ、リーマンショックやコロナショック等、ほぼすべての株式が同時に崩壊するような状況では、他の2種を圧倒する下げ率となり、保有者に壊滅的なダメージを与えるものとなります。
Russell 2000のセクター比率
ひとつのセクターで高くても16%程度。適切かどうかは別として、数値的にはバランスが取れています。
RYLDは他の2種のいいとこ取り?
総じて考えると、【RYLD】は非常にバランスの取れた優秀なETFのように思えますね。
【Nasdaq 100】ほど激しくなく、【S&P500】ほど大人しくない。
全体的なショックには弱いものの、平時は横ばいの値動きであり、カバード・コールに最適。
まだ設定されてから日が浅く、長期的な実績を確認することはできませんが、元指数の歴史を見る限り、従来のカバード・コールETFの良いとこ取りをしたようなものになると予想できます。
実績を比較
年間分配金の履歴
QYLD
XYLD
RYLD
過去の分配金を年単位でまとめたものです。
- QYLD:上下はするが常に高い
- XYLD:分配金額は増額傾向
- RYLD:まだ分析できず(QYLDに似てる?)
このように見て取れます。
設定来リターン
QYLD
XYLD
RYLD
- オレンジ:配当のリターン
- グリーン:株価のリターン
価格の推移には大きな差がありますね。
- QYLD:下落傾向(設定来マイナス)
- XYLD:プラス圏を維持
- RYLD:まだ分析できず
【RYLD】は設定後すぐにコロナショックを受けているため、なんだか残念な成績に見えてしまいますが、それ以降の部分では順調に値上がりしていますね。
いずれにせよ、3種に共通することは、プラスリターンのほぼ全てが分配金によるものだということ。
分配金を再投資した場合
3種のETFを、【RYLD】が誕生した2019年4月末以降で、それぞれの元指数と比較します。
QYLD
XYLD
RYLD
いずれも、赤がカバード・コール、青が元指数です。
- QYLD:QQQの0.56倍ほど
- XYLD:VOOの0.80倍ほど
- RYLD:VTWOの1.05倍ほど
元指数との比較にて【Russell 2000】がカバード・コール向きの指数であることがよくわかります。
しかし、コロナショック時においては、その最大下落率から分かる通り、小型株の集合体である【Russell 2000】は激しく値を下げており、ETFとしてのトータルリターンに大きな影響を及ぼしています。
今回比較した期間でのリターン
- QYLD:1.22倍
- XYLD:1.30倍
- RYLD:1.17倍
大きなショックや経済危機に出くわすかどうかで、パフォーマンスに大きく差をつけそうです。
長期投資をする以上、暴落にはいつか出くわすことになります。それを覚悟で【RYLD】を持つか、安定感を優先して【XYLD】を持つか…
とはいえ、直近のたった3年程度を切り抜いた比較ですので、ポテンシャルの全てが見えているわけではないことも事実です。
相場状況を見た使い分け
難易度は高くなりますが、相場状況によって保有する銘柄を入れ替えたり、追加投資する対象を変えるというのも一つの手段です。
これらカバード・コールETFには、共通する「分配金ルール」があり、中でも重要なものは【単期利回りの最大値が「1.00%」】だということです。
2021年における各ETFの単期利回りは、平均値を見るとおおよそ以下のとおりです。
- QYLD:0.95%
- XYLD:0.75%
- RYLD:1.00%
【QYLD】と【RYLD】は、やはり各期ほぼ満額の分配金となっていますね。
では、2022年は(まだ途中ですが)どんな成績でしょうか
- QYLD:1.00%
- XYLD:1.00%
- RYLD:1.00%
荒れ相場が続いており、得られるオプションプレミアムが高くなっていることから、どれも満額の分配金となっています。
さて、これを見たとき、どう感じるでしょうか?
【QYLD】と【RYLD】が分配金ルールの上限にぶつかってしまい、荒れ相場による恩恵を受けられてない用に思えませんか?このチャンスを活かせていないのであれば、この2種にとって荒れ相場はただの下げ相場です。
対して【XYLD】はいかがでしょう。
平時の利回りこそ控えめですが、今のようなチャンスを活かせる「伸びしろ」を残していたため、調子は絶好調。さらに【S&P500】という比較的値動きが安定した指数であることから、他と比べて値下がりも抑えられているため、分配金額としても高水準を維持しております。
現在価格の1%が分配金の最大値であるため、ETFの価格を維持することも非常に重要な要素なのです。
平時は【RYLD】または【QYLD】を持ち、有事は【XYLD】を持つ。これにより、常に高水準の分配金を得る。なんてこともできそうですね。
ただ、思いがけないボーナスもある
ここで、2021年12月の単期利回りを見てみましょう。
- QYLD:2.20%
- XYLD:0.90%
- RYLD:1.25%
分配金ルールを無視した超高配当となっています。
これは、運用会社の都合(いろんなやりくり)により発生した特別な分配です。
今後も続くかはわかりませんが、【QYLD】と【RYLD】にはこういったボーナスがあるかもしれないと思うと、なかなかワクワクしますよね。
長期投資なら?
これら紹介した傾向から考えると
- QYLD:目先で多額の分配金がほしい
- XYLD:分配金の成長をある程度期待
- RYLD:目先で多額の分配金がほしい
となるため、長期投資用として保有するのならば、若干ながらも成長が期待できる【XYLD】が良いと思います。
目先の生活費に充てがったり、とにかく分配金が欲しいといった方には【RYLD】が合っていると思います。
ただ、少し心配な点も。
【XYLD】と【RYLD】は、【QYLD】と比べて時価総額と出来高が圧倒的に低いのです。
時価総額にあっては、【QYLD】は【XYLD】と【RYLD】の約6倍となっています。
3種の中で最初に設定されたのは【XYLD】なのにこの差です。やはり利回り重視の方が人気なのでしょうか。
おすすめのセット
完全に私見ですが「私が持つならこう」というものをご紹介します。
分配金を優先させるなら
【QQQ】+【RYLD】
成長を期待するなら
【QQQ】+【XYLD】
私は現時点で高額の分配金を必要としないので、【XYLD】を保有し、じわじわ成長して行くことに期待します。
QYLDは?
長い目で考え【QYLD】は持ちません。「大きなうねり」を形成する【Nasdaq100】がカバード・コール戦略に適しているとは思えないからです。
【Nasdaq100】に関する投資をしたいなら、素直に【QQQ】を持ったほうが良いかなというのが本音です。
横ばい相場を期待するなら、【Nasdaq100】より【Russell 2000】の方がその期待に応えてくれると思います。
仕組みを知ること
トレード・オフの関係
繰り返しになりますが、これらカバード・コール戦略のETFにはいくつかの運用ルールが定められており、その中で最も分配金に影響するのは
- 単期利回りの最大値が1%
だということです。
つまり、分配金利回りのために高いボラティリティ(=オプションプレミアムが高い)を求めることも大切ですが、基準価格の上昇、少なくとも維持が重要だということです。
[$15.00]の1%は[$0.15]ですが、[$25.00]だと[$0.25]です。年間にすると[$1.8]と[$3.0]であり、大きな差になります。
しかしながら、カバード・コール戦略において基準価格の上昇を求めることは、必然的に低いボラティリティ(=オプショプレミアムが安い)を求めることになるため、この場合は単期利回り1%を達成できるかが怪しくなってきます。
キャピタルゲインは狙わない
本来、カバード・コール戦略とは「横ばい相場」での利益を狙う手法です。手法の仕組み上、指標(元指数)の価格上昇をあえて捨てることになります。
また、ETFの運用ルールである「単期利回りの上限が1%」ということも頭に入れておかなければなりません。
ここで、【QYLD】と【XYLD】について、分配金を再投資した場合の設定来チャートを見てみましょう。
まずは【QQQ】と【QYLD】の比較です。
次に、【VOO】と【XYLD】の比較です。
いずれも、赤がカバード・コール、青が元指数です。
- QQQ:QYLDの2.1倍ほど
- VOO:XYLDの1.5倍ほど
分配金の高さが自慢でしたが、それをすべて再投資した場合でも、上昇局面に乗った元指数の値上がりには遠く及びませんでした。繰り返しになりますが、横ばい相場での利益を狙う手法です。上昇局面での利益は元指数に劣ります。
それを踏まえた上で目先の配当金を求めるならば、これらETFは最高の相棒となります。
- 家賃などの一定額を分配金でまかないたい。
- FIRE目前だから分配金に重きを置きたい。
- とにかく分配金の喜びがたまらない。
- 配当金で毎月素敵な外食!
- お寿司!焼肉!
自分には何が必要なのか。
なんのために投資をするのか。
自分の信念に従い、素直な気持ちで投資を続けましょう!
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