8月上旬の大暴落以降、SNSにおいて、やれ底値で買えただの、やれ暴落前に売れただの。自分の判断の良さ、成績の良さを誇示する投稿が増えた。
別にそれはまったく構わない。ともに褒め合い、ともに高め合い、ともに励まし合うことで幸福感を保つことは、投資継続のモチベーションを維持することに役立つ。SNSの使い方として適切だろう。
ただ、問題はその投稿の実態だ。例えばだが、あらゆる株を1株だけ保有し、その上で毎日1株売買していれば、いつかは暴落前に売れたものも出てくるし、暴落の底で買えたものも出てくる。毎日いくつかはストップ高の直前に買えるだろうし、逆にストップ安の直前に売ることもできる。これをひとつの事実とし、「底で買えた!」「直前で全売り!」などと叫ぶ者もいるだろう。
そこで考えてみてほしい、そんなことをやって意味があるのかと。だがインフルエンサーになりたがる人の一部には、こういったやり口で注目を集めようとする人もいるだろう。爆益の証拠としてスクショを投稿していても、保有株数を隠し、パーセンテージだけを見せているなら…もしかしたら保有数はたった1株かもしれない。1,000円の株を1株持っていて、それがストップ高になったと言われたところで…羨ましくもなんともないだろう。
無意味かつ無価値、詐欺的な主張には気をつけなければならない。底買いを誇示したいがために、毎日「余剰資金をフルベット」したり「果てなき緊急入金」を繰り返す不思議な「先生」もいる。偶然の底買いなのに、後付けで「私が底で買えた理由」を訳のわからん内容で公開する人もいる。『妙に』注目を集めている人の大半はイカれてる。まともじゃない。最近見ないあのピグレットのように。
さて、ここからが本題だ。こういった「他人からの注目を集めることを目的とする」ことを『センセーショナリズム』という。SNSの運営手法としては、ある意味で王道だろう。注目さえ集めてしまえば、ろくに考えもしない人からの「いいね」が集まり、それが増えるとまた別の人に「おすすめ」として表示される。そしてこれがループする。
また、「いいね」が多い投稿は、内容に関わらず「正しい」と認識されやすい。これは『社会的証明』という。「大底で【SOXL】買えた!大爆益!」なんて投稿は『センセーショナリズム』の塊であり、注目を集めやすい。そして集まる「いいね」により『社会的証明』も得られる。これにより多くの人が、暴落局面でレバレッジを効かせることを「正しいこと」だと認識してしまう。
だが忘れないでほしい、その前日に買った人の存在を。その人は勝者になれず、残念ながら大損となり、大後悔のなか姿を消す。さらにその前日の人もいるだろう。暴落の底で逆に【SOXS】を買った人も同じだ。みな同様に「いま、この時!」と判断し大博打を打った者たちだ。ただそのタイミングが少しだけズレていたため、惜しくも敗者となった。
わかるだろうか、これが『生存者バイアス』だ。勝者にばかり目を向けてはいけない。勝者からのみ学ぼうとしてはいけない。学びたいのなら、敗者から多くを学ぶべきだ。なぜかわかるだろうか。「敗者の方が圧倒的に数が多い」からだ。サンプル数が少ないと『過学習』に陥る。これは「馬鹿の一つ覚え」を誘発する非常に危険なものだ。
コロナショック同様、今回の暴落も一瞬で回復した。そのため、今のところは「大きく下げたところで全力投資」した人が最も大きな利益を得た形となっている。だが、いつか来るであろう次の暴落も同じだとは思ってはいけない。数回落ちたり、じわじわ落ちたりするものもある。なので決して「暴落時は全力買いでいいじゃん!」とはならないでほしい。それはまさしく『過学習』だ。コロナショックを『過学習』してしまった人々が2022年にどんな目にあったかは勉強しておくべきだ。私もそこで辛い目にあった。
SNSの適切な利用、これは本当に難しい。分別のある人間だけが利用すればいいのだが、現実問題として投資詐欺が蔓延っていることからもわかるように、大抵の人には分別なんてものは備わっていない。
暴落時は情報を集めたくなったり、助けを求めたくなったりするが、そういうときにこそSNSの利用は控えるべきなのかもしれない。お口にチャック、手はお膝、お酒を飲んで寝る。冷静でないときに空売りやベアで儲けている投稿を目にすると不要な焦りを生むため、何も見ない方がいいのかもしれない。
ピンチはチャンスでもあるが、ピンチがピンチであることに変わりはない。ピンチの場面でチャンスにしか目が向かないのであれば、それは熱狂と欲望に支配されているのだ。「こういう時に投資できる人が〜」と言うが、それも『生存者バイアス』だ。ピンチの時にあえて儲けに行かなくてもいいのだ。ピンチはピンチと受け止め、底など狙わずじっと耐え、ピンチでもチャンスでもない平時に儲ければいい。
今回の暴落、誰にとっても貴重な経験となったはず。暴落とはあのような値動きになり、SNSはあのような感じになるのだ。少なくとも、これはコロナショックの時から変わらない。そしてこれは綺麗事かもしれないが、激変する相場と向き合い、メンタルを擦り減らしながらも生き残ったならば、そこで儲けていようが損してようが「勝ち」だ。経験は金銭に勝る。これは必ず次に活きる。
株価は底値からだいぶ戻したが、当然まだ油断はできない。これを機に、自身のリスク許容度や投資手法、SNSとの距離感を見直してみるのはいかがだろうか。
…今回はこんな感じ。いつも読んでくれてありがとね。本当にうれしいよ。
それじゃ、またね!
P.S. この記事は、暴落にビビり散らした挙句なにも仕込めなかったわたしによる妬み全開のものであることを申し添える💢
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
今回の記事、参考になりましたか?
よろしければ、下の応援ボタンをポチポチしてくださいませ。本当に励みになります…