この記事では、人気の米国高配当ETFである【SPYD】について、それを「権利付最終日」に買うべきなのか、分配金を狙わず「権利落ち日」に買うべきなのかを検証します。
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これら2つは分配金を得るために意識するべき重要な日であるところ、これの前に買うか後に買うかでどちらの方が得なのかについてしばしば悩まされるものでもあります。
今回は、これらの問題について【SPYD】の分配実績から検証してみようかと思います。
(検証をしておいてアレですが)長い目で見たとき、一日の値動きは些細なものです。分配金を目当てにしているのだから、目先の損得は気にせず、早い段階で買ってしまいましょう。
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権利またぎについて
権利またぎとは、ETFから分配金を受け取る権利を得ることを言います。
スプレッドシートにて5分で作った図解です。(日付は例です)
単純に分配金だけが欲しいのならば「権利付最終日の終値」でETFを買い、それを少なくとも翌日(権利落ち日)の寄り付きまで持ち越すことで分配金を得ることができます。なお、権利落ち日の始値で売っても分配金は受け取れます。
なにか問題があるの?
分配金の権利落ち日は、ETFの価格が下落する傾向にあると言われています。分配金欲しさに焦って買付したはいいものの、それ以上に価格が下落してしまってはなんだか微妙ですよね。
5ドルの分配金を得たものの、ETFの価格が権利落ち日に7ドル下落してしまった。それならば、分配金を狙わず、権利落ち日にETFを買っていた方が2ドル得だった。といった感じです。
なにもない通常の日であれば問題ないのですが、権利関係の日に近づくにつれてそれを意識してしまい、投資タイミングの判断に迷いが生じることもあるため、ここでひとつ過去の傾向を調べてみようというところです。
【SPYD】が誕生してから今までに、分配金は「27回」発生しています。(2022年8月17日時点)この「27回」において、権利付最終日と権利落ち日でどのような値動きがあり、分配金を考慮した場合にどれくらいの損益が生まれていたかを確認してみましょう。
権利付最終日の終値から権利落ち日の始値
最も単純な「権利またぎ」です。権利付最終日の終値で買い、翌日の始値で売るようなイメージです。場中の値動きという要素がないため、分配金発生による下落と、権利落ち日の寄り付きによる変動だけが変化分となります。
価格変動のみを見た場合の騰落
- プラス :2回
- マイナス:25回
権利またぎでプラスリターンになった割合は「7.41%」でした。金額に差はあれど、ほぼ間違いなく権利落ち日には基準価格が下落しています。
分配金を考慮した場合(税引前)
権利をまたいだということは、分配金を受け取ることができるということです。先程の例は単純な基準価格のみを見た騰落でしたが、受け取る分配金を加味した場合どのような結果になるでしょうか。
- プラス :17回
- マイナス:10回
分配金を考慮した場合、権利またぎでプラスになった割合は「62.96%」でした。権利付最終日に買付し、分配金の権利を得た方が結果的にプラスとなることが多かったということですね。(税引前だということにご注意ください)
分配金を考慮した場合(税引後)
ひとつ上の例に税金の要素を加えて検証してみます。受け取る分配金に「0.717165」を掛けて考えます。(米国での所得税と日本での所得税)
なお、税金については、その投資家の損益状況、買付口座種別、確定申告の有無など、各個人投資家により差が生じる要素によって最終的な支払い額が変わってくるうえ、安値で買付できたとしても、売却時にはその分多くの譲渡益税が課税されるため、本来であれば各自で自分に合わせた計算をする必要があるところですが、今回はわかりやすさを重視し、単純に日本と米国で発生する所得税のみを差し引いて計算します。
- プラス :9回
- マイナス:18回
プラスになった割合は「33.33%」でした。税金を考慮した場合、権利付き最終日に買った場合は結果的にマイナスとなることが多かったようです。
権利付最終日の始値から権利落ち日の始値
少し違うパターンで検証してみます。今回はどちらも始値です。これは寄り付き時に「成行」にて売買するような想定です。先程の検証は、権利付最終日の終値で買付するという現実的に難しい想定でしたが、今回はそれなりに現実味のあるものになると思います。
価格変動のみを見た場合の騰落
- プラス :5回
- マイナス:22回
プラスになった割合は「18.52%」でした。やはりこちらのパターンでも権利またぎのタイミングで価格は下落することが多いようです。
分配金を考慮した場合(税引前)
- プラス :14回
- マイナス:13回
分配金を考慮すると、権利またぎでプラスになった割合は「51.85%」でした。ほとんどトントンですね。(税引前だということにご注意ください)
分配金を考慮した場合(税引後)
- プラス :12回
- マイナス:15回
プラスになった割合は「44.44%」でした。税金を考慮した場合、プラスの回数は半数を少しばかり下回ってしまいました。外国税額控除やNISA枠を活用した場合に、トントンになるかギリギリ上回るかといったところでしょうか。検証の回数は少ないですが、過去の傾向どおりに行くと仮定するならば、権利付最終日の寄り付きでは買わない方が良さそうですね。
参考その1 権利付最終日の値動き
よく聞く話として「権利付最終日は買いが集中するため、値上がりしやすい」といったものがあります。優待銘柄にて特に聞くものですが、【SPYD】ではどうなのでしょうか?
権利付最終日の始値から終値までの値動きを見てみます。
- プラス :14回
- マイナス:13回
ほとんど同じですね。予想することは難しそうです。
参考その2 権利落ち日の値動き
一般的に「権利落ち日はよく売られるため、価格は下落しやすい」とされていますが、【SPYD】ではどうなのでしょうか?
権利落ち日の始値から終値までの値動きを見てみます。
- プラス :9回
- マイナス:18回
こちらのパターンでは、値下がりすることが多いようです。取得単価を下げたいのなら、権利落ち日のザラ場か終値付近で買うと良さそうですね。
深く悩むほどの差はない
そこまで劇的な差は無さそうですが、分配金を目的として【SPYD】を買付するのですから、権利付最終日までに買っておかないとその目的は達成されませんよね。
しかし、売却益を狙う場合や証券口座の「含み益表示」を求めるなど、少しでも安く買いたいと考えるならば、権利落ち日に価格が下落することは明らかに多いため、(確定的ではないものの)分配金の権利を得ず、権利落ち日に買付した方が良さそうですね。
とはいえ、それも確実ではないし、予想に反して値上がりしてしまった場合のショックは大きいでしょうから、あまりタイミングを選ばずに買った方が良いと思います。【QQQ】などの売却益のみを狙う銘柄でしたらタイミングが重要になりますが、分配金狙いの銘柄ならば、比較的重要度は下がるでしょう。
それならば、変に意識してストレスを抱えないよう、毎月10日に買付するなど、あえて別のタイミングで買ってしまうというのも手段のひとつ。
何よりも大切なのは、金銭的な利益ではなく、心身の健康です。投資ごときでストレスを抱えるようなら、それはリスクのとり方を間違えているということです。
分配金を目当てとした投資は、売却狙いのそれと比べてストレスを抱えにくいものとなっています。ストレスフリーを維持し、長くしぶとく続けていきましょう。
なお、今回の検証はあくまでも過去の実績をもとに計算しただけであり、将来の値動きを予想するものではありません。記事内のパーセンテージはあくまでも「割合」であり、今後を予測する「確率」ではないことをご理解ください。
皆さんの投資判断の一助となれば幸いです。
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